2007.5.18 「ダーチャとバーニャ」の巻

 滞在登録を済ませたロシア初日の夕方、サウナへ行こうという友人に賛同して郊外へ向かう。ロシア式サウナにももちろん興味はあったが、私はシャワーが浴びたかった。
 この季節、モスクワ市内の一般共同住宅(アパート)などでは3週間ほどお湯が止まるのだという。暖房給湯設備の保守点検ということらしい。ホテルやデパート・ショッピングセンターなどでは普通にお湯が出るようだが、部屋を借りている友人のアパートでは普通にお湯が止まっていた。メデタクこの季節に飛び込んだ私は当然、お湯を沸かして溜めて行水する、という次第だったのである。
 というわけで、サウナ目的で向かう先は友人所有の"ダーチャ"。ロシアの"ダーチャ"とは、人々が郊外に持ち週末や休暇を過ごす家で、言うなれば別荘である。しかし、日本でイメージする富裕層の別荘とは違い、一般的には寝泊まりするだけの簡素な(手)造りで水や電気の無いものも多く、その代わり庭で野菜やら何やらを作ったりしてゆったりと楽しむのが主たる目的であるらしい。とはいえ、中にはしっかり建てられた常時居住対応であるものもあり、まあ人それぞれに活用しているのだろう。我が友人のは後者の方で、一時的に週末を過ごす楽しみ場所、というよりはきちんと住める家で、そこにサウナも設置しているらしかった。
 さて、畑もちらほら広がるようなエリアに入り、とある一軒家の脇に車は止まる。降りるとすぐに飛んできたのは一頭の犬。管理人でもいるのかな、と思う間もなく追ってきたのは小学校低学年そこそこの少年。管理人の子供かな、と思うと程なく庭で会ったのは、リラックスした様子の年配のおじさん。管理人さん?と思いつつ友人に訪ねると「父だよ。」…え?!続いて現れた、これまたリラックスした格好の年配のおばさんは、まさか…「母だよ。」…ええっ?!…じゃさっきの男の子は…??「弟の息子。」…えええっっ?!
 かくして程なく帰ってきた弟さん夫婦も合わせ、何の予告もなくイキナリご家族に会う羽目になったのであった。…つまるところ、この"ダーチャ"と言う名の別宅には、両親と弟一家が普通に住んでいるのであり、そこにサウナ小屋も併設されており、私たちはそこを利用しに来たのであった。私はそのひとつひとつの要素をバラバラにしか聞かされていなかったというわけである。家族に会うならそうと言え!びびった。
 動揺する私を尻目に友人は当たり前のように(当たり前だが)キッチンのベンチに腰をおろし、私も追って席につくと間もなく、目の前に乳白色のスープが供された。"アクロシュカ"という伝統的夏の野菜スープだそうである。今回の旅の後々までもしみじみ思ったことだが、ロシアでは野菜のスープが充実していると思う。ドイツ料理などよりもずっと重くなく胃に優しく食べやすく感じたのは、豊富に使われている野菜のせいかもしれない。冬の特に長い寒い国だからこそ、野菜を重視するのかなあ、などと思う。*
 それはさておき、本命のサウナ。"バーニャ"と呼ばれるそれは、昨年フィンランドで経験したサウナとは若干仕様が異なるようで、熱く焼いた石に水をかけて主に蒸気で熱気を浴びるような方式だった。サウナ室の外、脱衣場所には簡易ベッドも備えてあり、横になって休んだりマッサージをしながらゆっくりサウナを繰り返すのだ。雑誌で読んで知識のあった、葉っぱの付いた木の小枝で体を叩いて血行をよくするのも思いがけず経験することができ、その木の芳香が蒸し暑いサウナの室内にふんわり広がって、サウナとはこんなに気持ちのいいものだったかと思った。
 かくしてロシア滞在一日目はやっぱり非一般的旅行者として終えるのであった☆

*残念ながら食べ物の写真は一切なし。旅先で食事の度に写真をとる日本人的習慣を持ち合わせていない事を、今回の旅では本当に後悔した。




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