2007.5.23 「クレムリンと宝物 2 ―めぐり逢い・卵―」の巻

 2年半前のニューヨーク訪問での目的に卵があったように、当然今回のモスクワ訪問でも私は卵を目指していた。ロマノフのお宝、インペリアル・イースターエッグである。

 イースターエッグとは、キリスト教圏において春の復活祭(イースター)の時季及びそれを祝う為に欠かせない、カラフルに着色などした卵であり、特にスラブ諸国辺りではピサンキ(ピサンカ)などと呼ばれ、伝統的な装飾模様が美しく施されている。
 が、インペリアル・イースターエッグはただの装飾卵ではない。"インペリアル"の言葉が指す通り、皇室のイースターエッグであり、ロシア・ロマノフ朝皇帝アレクサンドル三世及びその息子にして最後の皇帝ニコライ二世が家族への贈り物として特注で作らせた代物である。それを制作して納めたのがフランス系ロシア人宝飾商カール・ファベルジュ* 。そのファベルジュの類い稀なる才能と、時の絶対君主制がもたらす莫大な財力を掛け合わせて生まれた一点もののシリーズ。ほぼ全てが金銀エナメルその他の宝石で作られているだけでなく、繊細な卵のどこかしらに必ず何かの仕掛けや隠れた細工が施されている。ロマノフのインペリアル・イースターエッグは50個制作されたとも58個とも言われているが、現在までに所在が確認されているのは44個という話で、残りは依然として行方不明というロマン付きの、正に宝探し対象品(?)なのである**。

 その「ファベルジュの卵」がここクレムリンの武器庫にある。フォーブス・ギャラリーでは肩すかしをくい、同じロシアに来ているとはいえ、フォーブスからロシアの資産家に売られた卵達は残念ながらウラル地方へ巡業中、との友人情報。だが武器庫の卵は出張していないはずである。前日のクレムリン入場料及びダイヤモンド庫入館料を考えると少々腰が引ける思いもあったが、せっかく縁あってモスクワに来られたのである、ここで乗り込まずに帰られようか!
 …というわけで、オーディオガイドと抱き合わせのみ、という本日の入場料(武器庫のみ)550ルーブルを払って、来たぞ来たぞ、念願の宝の館!…っつーか、ぼったくり過ぎだろう!!
 この博物館の中は結構広い。時間も気力も体力もそれなりに必要と思われる。が、明らかに金銭的価値莫大、といった歴史の残存物が見られるので、やはり来て良かったと満足した。武器・武具の類いはもちろん、装飾品、生活用品、銀器、宗教用具から、皇帝皇族の衣装、冠、歴代の馬車に至るまで!…やっぱり入場料は保険料に違いないと頷きながらぐるぐる回って堪能感動。小学生ぐらいのグループがいたりもしたが、学校の授業等の一環でこんなところに来られるならそれはそれは贅沢な経験であろう。君たち、そこんとこわかってる?!
 さて、件の卵はといえば、順番に見て行くうち割と早い段階で出てきたので、最初に長居して見蕩れた上、一回りした後に戻ってまた眺め、ともすれば全く実感のなくなりそうな感動を噛み締めた。その、9個の宝の卵で(1個は出張中だったようだ)。


*実際に手掛けたのはファベルジュの工房の職人達らしいが、デザイン等を監督したのはファベルジュ本人であるらしい。
**2007年秋、「ファベルジュの卵」の内、一般(皇室ではない、の意)向けに制作された卵の一つが新たにロスチャイルド家で発見され、サザビーズにて競り落とされた。落札額は18億円とも22億円とも。



後日ある日のクレムリン入り口前チケット売り場。ものすごい行列。


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