「学習は文化につれて2 -愛だろ、愛!-」の巻

 私の好きな語学学習書に、白水社出版の「言葉のしくみシリーズ」というのがある。各本のタイトルが、例えば「ロシア語のしくみ」「ドイツ語のしくみ」などとなっているシリーズである。
 学習書といっても、簡単にキモの部分だけを読み物的に書いてあって(つまり細かい文法や用語は省いていて)、その言語の骨格だけを短い例文と共に紹介しているので、入門者には非常にわかりやすく、なによりとっつきやすく、しくみ(文法)概観を理解するには非常に良いと思う。もちろん、きちんと学んで行くうちには全然足りないし、いかにも入門/概論的なものではあるが、根幹を押さえたり、興味本位で覗いてみるには、読み易いし良いのでは、と、日本人の友人には、折に触れて勧めている。
 さて自分自身、ロシア語、チェコ語と読んだ後、「ポルトガル語のしくみ」に至ったあたりで興味深いことに気が付いた。決して多くない例文の、その短い文例に、なんだかお国柄というか、文化背景的なものが垣間見えたのだ。
 本シリーズはそれぞれの言語の専門家によって書かれていて、文体はもちろん、学習内容の順序等も全く同じではない。大体は、発音のルール、人の名前の規則、疑問・否定、いわゆる人称とその対応変化、所有、形容詞や動詞、数の言い方などから成っているのだが、必ずしも同じ単語やシチュエーションで紹介しているわけではないし、時折その国の文化や習慣の話も交えながら進んでいく。
 その中で、例えば「ロシア語のしくみ」では、まず最初に「これはモスクワです」から始まり、「これはボルシチです」「ぼくはミーシャです/私はナターシャです」「私は日本人です」などと続く。かつて中学校で習った英語の「This is a pen.」「I am Tom.」に近いものがある。その後は構文の紹介と共に「これは誰々の傘です/車です」「私は○○(場所)で働く」などと展開されるのだが、どうも「働く」「電話する」「書く」「行く」など比較的堅い印象が強い例文が多い。チェコ語も似たような展開と印象だ。
 一方、「ポルトガル語のしくみ」では、一番最初の例文が、「ヌーノはクララを愛する。」・・・いきなり愛か! もちろん次の例は、「アンドレーはヴェロニカを愛する。」・・・。
 この2文は発音の規則説明の一環で単語を紹介する為なのだが、それにしても、のっけから愛情表現とは、なんとなくラテン系な、熱いノリが根底にあるような気がしないだろうか。
 その後も、サッカーの話題を交えつつ、やはり「愛する」だの「恋人」だの「パウラは美しい」だのという、「ロシア語ー」や「チェコ語ー」では記憶に薄い、情熱的な(?)単語や文章を散りばめて、全体がまとまっていた。(「働く」や「本を読む」なども出てくるが、かなり少ない。)
 もちろん、たまたま、なのかも知れない。しかし「ポルトガル語ー」の本書に目を通した、スペイン語を話す友人も曰く、「いや、たぶんスペイン語もこんな感じでいくと思う・・・。」
 ・・・こんなところに垣間見える文化もあるか? ドイツ語や英語はどうなのか。ちなみに、今は「日本語のしくみ」も発刊されているのが…。




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