2007.5.31 「モスクワの白鳥」の巻

 せっかくのロシア、モスクワだもの、何か本場のバレエを観たい。できれば“いかにも”演出の古典作品―。
 わからないロシア語で路上のチケットブースを覗き歩き理解したのは、今日は『白鳥の湖』しかないってこと。地下鉄駅のブースで教えてもらって、MXAT(ムハット=チェーホフ記念モスクワ芸術座)での『白鳥―』を考慮するも、提示された金額が予算をかなり上回っていたので、とりあえず劇場へ直接乗り込んだ。
 しかし二週間で充分すぎる程わかったけれど、ここモスクワでは土産屋以外は英語がほとんど通じない。劇場窓口も例外じゃなかった。窓口のおば(あ)さんが明らかに英語を理解していない。それでも目の前の女性2人組がどうやら同じチケットを求めている様子で、若い方が英語を理解しそうだったので聞いてみたところ、求める席はまだあるようで、しかも窓口のおば(あ)さんに、その旨伝えてくれたのだった。スパシーバ(ありがとう)!
 こうして購入したチケットは、なんだか知らないけど最前に別のブースで聞いた値段よりも破格に安く、やったやった♪と思ったが、この時点で私はこの公演の内容を把握していなかった。というのも、この窓口前でも地下街の通路でも、『ジゼル』や『ロミジュリ*』はいかにもな写真のポスターがあったのに、『白鳥―』のポスターは見つけられなかったのだ。ロシア語のタイトルが読めなかったせいではあるが、前者二つは写真を見ればわかる、というものだったのに。
 さて、そんなこんなで出かけたバレエの舞台。聞き慣れた音楽の中、開始早々これがモダン演出であることはすぐにわかった。が…。…なんだか“白鳥の娘たち”が踊ってない。待っても待っても“乙女たち”が出て来ない。代わりに、白い羽根がふわふわついた衣装(下半身のみ)の、裸の上半身の筋肉も美しい男性の群舞が続いている。そして明らかに顔には鳥メイク……「白鳥のオトコたち…」???
 そう!この物語は人間の王子と白鳥の王子の清く悲しい愛の物語だったのだ(マジで)!
 そんな登場人物の新装版(?)になかなか人物関係が掴めないまま前半終了。休憩時間に隣の席のロシア人カップルに(英語で)「この演出って…」と話しかけると、初老のご主人も「ん〜そうらしいね〜…」と複雑な様子で答えてくれた。なるほど、これでポスターが見つけられなかった訳がわかった。ポスターは確かにあった。ただ、その紙面には大きく、羽根つき衣装の男たちの群舞―私が知っている『白鳥―』のシーンとは程遠いものーが載っていたのだった。
 結局最後まで“白鳥の娘たち”の群舞は現れず、二人の美しい王子が悲劇的な最後を遂げて物語は終わったが、登場人物の誰も彼もが素晴らしい踊りをみせてくれ、その生き生きした表情と動きが非常にエネルギーを与えてくれたのだった。ちなみに私が買った座席は前から4列目―でも端っこに付け足した席―というわけで、妙に安かった理由も判明したのだったが、正規の席が空いていたので詰めて座って観る事ができ、とても良い観劇の夜となった。

 さて後日、辞書を引き引きチケット券面を読んでみたところ、驚くべき事が判明(←ってか最初に読め)。なんとこの公演はイギリスのマシュー・ボーンの演出/バレエ団によるモスクワ公演だったのだ。なるほろー。ロシアのこてこて古典演出じゃなかったのも頷ける。しかもこのマシュー・ボーンの『白鳥―』は有名で、旅行直前にDVDで観た映画「リトル・ダンサー**」のラストシーンでも使われたものだった。得した♪もうけた♪
マシュー・ボーンの『白鳥の湖』公式サイトはこちら→Matthew Bourne’s Swan Lake


*『ロミオとジュリエット』
**原題『Billy Erriott』


当日のチケット



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