2004.9.20 「(たぶん)親切な人」の巻

 頃は9月の後半、処はミュンヘン。世に名高い「オクトーバー・フェスト」(「酒飲み遊園地」の巻参照)は連日午前中(たぶん11時ぐらい)から夜中(たぶん23時ぐらい)まで開催されているのであるからして、今時のこの街は、地元民・観光客を問わず赤ら顔の人間が多い…ような気がする。

 さて、ここバイエルン地方は、領邦国家の歴史をくんで地方性の強いドイツの中でも、ひときわ顕著な文化と民族性を見せている地方である。もしかしたら日本人が「これが(いかにも)ドイツだ」と思うものやイメージの多くがバイエルン地方のものなのではなかろうか。
 民族衣装もそのひとつ。そこで、趣味でヨーロッパの民族舞踊をしている母へ贈り物を探しに出かけた。何しろ本場。少々高級な専門店から大きなスーパーの衣料コーナーまで、選択肢は(割と)幅広い。
 せっかくなので、できそこないのハイジのようなものではなく、しっかりした良い物を、と思うのだが、一式(ブラウス、ワンピース或は上下、エプロン)となるとお値段もかなりのものになるし、なによりサイズが問題だ。日本でも小柄な母に“試しに”買ってみるサイズなどない。やはり無理か…。
 考えながらとある専門店のウィンドウの前に立っていると、
「綺麗よね。でもここは高いわよ。」
と話しかけて来た女性がいた。一見して私の母と同年代というところだろうか。ごく普通の、地元の街のお母さん、という感じである。そしてその“母の勘”で見抜いたのか決めつけたのか、事情も聞かずに手を引いて、「こっちへいらっしゃい。」……???
 チョコレートもくれないのに知らない人に付いて行ってしまうのはどうか、とも思ったが、悪い人でも怪しい人でもないようだ。「どこへ行くんですか?」「こっちの店の方が安いのよ」そんなやりとりの合間には彼女の息子の話か何かがあったと思うのだが、あいにく私のドイツ語力はお粗末なものであり、かつ彼女の訛りもなかなか強力である。…訛り…?いや、もう一つ理由がありそうだ。あきらかに酒臭く、顔が少々赤い。「…もうフェストに行って来たんだな(でなきゃ、そこらで飲んでたのか?)…。」午後2時過ぎである。
 もしかしたら、もともと人の好いこのおばちゃんは、昼から飲んでご機嫌で、“買い物したいけど土地勘のない”観光客に世話を焼きたくなったのかもしれない。少なくとも先ほどより繁華な通りへ向かっているようだしいいか、ととりあえず一緒に行くと…。
 「ここよ!ここの方が安いのよ!(^///^)b」
…そこは、20分程前に「やっぱ安物はなー…」と思って素通りしてきた、良心会計な衣料品店であった…。
 酔っ払いの口調と酒臭さで店員に困惑されながらも、売り場を聞いて連れて行ってくれたそのおばさんに感謝して、その後彼女が見えなくなった頃合いを見計らって私も店を出た。




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