2007.5.28 「アドゥヴァンチクの咲く要塞」の巻

 サンクトペテルブルク最終日。明日はモスクワへの帰途につく。
 今日は(もちろん午後から)ぶらぶら大通りへ歩いてゆき、まずは腹ごしらえにマクドナルドへ。隣のテーブルには4人の可愛くてお洒落な女子学生がいて、私と友人がドイツ語で会話していたのを聞きかじり、ロシア語のできない日本人の私に興味津々だったらしく、まもなく彼女らとおしゃべりタイムとあいなったー英語で。私が常々思うように、ドイツ語の方がロシア語に近いらしく、彼女らにとってはさほど難しい言語ではないとのこと。むしろ英語の方が難しいとか。
 女子学生達と別れて歩き出してまもなく、運河のボートクルーズに参加。水路からペテルブルクの街を観光した後、今度は大きな橋を歩いて渡り、ペテロパヴロフスク要塞へ。
 まだまだ日は高いとはいえ、まもなく博物館等は閉まり始めるような時間。後になって知ったが、ペテロパブロフスク聖堂には、近年になってやっと遺体が確認されたニコライ二世皇帝一家が、移送され改めて埋葬されているそうで、他人任せの観光をしたことを激しく後悔。事前に調べて知ってたら絶対見に行ったのにー!その他の要塞内の建物等にはそれほど興味をひかれなかったが、ぐるりととりまく川で遊ぶ成金のモーターボートと、岸壁に沿って続く草むらに咲き誇るたくさんの黄色いタンポポ(ロシア語で“アドゥヴァンチク”)が印象的だった。
 革命と戦争の重ね塗りで出来上がってるよな歴史を乗り越えて、恐らく今ロシア国内の貧富の差はとんでもない。「公務員でさえ給料だけじゃ生活できない(だからヤミ副収入を…)」という話の一方で、こうして目の前では、アホみたいに長ーーーーーーーい白塗りのリムジンを乗り回して屋根から得意げに彼女と共に顔を出している者もあり、広くもない運河から川にかけてジグザクとムダに水しぶきを上げながらモーターボートを暴走させる者もあり・・・。「どうにか大きく稼いでそのお金で自分もああやって贅沢を見せびらかせたい」という友人の言葉は恐らく珍しいものではなく、多くの人がそういう稼ぎ方と遣い方に憧れているように見えた。それが“いい生活”で、成功者はそうして顕示するもの・・・。先日、“(お金を)少しずつ貯める”という考えを示唆する私に、この国の歴史と情勢が“銀行”や“貯めて置いておいたもの”に全く信頼を置かせないことを、友人が当たり前のように語り流していた。
 そんな光景と考察の間でぶらぶらしながら、タンポポの草むらで一休み。花輪の作り方を思い出せないでいると、ロシア語しか話せない友人が、近くで遊んでいた10代と思しきグループの女の子達をわざわざ呼んで来た。彼女達も花輪を作っていたので、教えてもらえ、ということらしい。だが、最初に熱心に教えてくれた子はドイツ語も英語もほとんど話せず、まさに見よう見まね。別の子が作ってくれるのを見ながらやっと、子供の頃のやり方を思い出した。その茎の長い背高にのびたタンポポで立派な花冠を作ってくれたのだが、その間に英語の上手な男の子が加わってきたり、他の子達が入れ替わり来たり。やはりロシア語も話せないまま普通に遊びに来ている日本人(外国人)が珍しいらしい。一番最初の女の子がやたらと興奮して一所懸命何かをしゃべろうとしているのだが、言葉がわからない、というより本人も何をしゃべりたいかすらわからないまま一人で盛り上がっているらしく、回りも彼女がどうしたいのかよくわからない様子。やがて落ち着こうとした彼女がおもむろに取り出したのは茶色い粉。・・・・・・まさか。「・・・ねえ、(友人に向かって)アレさ・・・。」「コカインじゃないかな。」・・・。誰一人驚く風もなく、そんな当たり前みたいに持ってるものなの?! …と、まるで普通にタバコでも吸う姿を見る様な思いで見ていると、ようやく少し落ち着いたのか、ニッコリ笑ってごく自然な様子で私にも勧めてくれたのだが、今回はご遠慮しておいた。
 それから少し彼(女)らと決闘ごっこみたいな遊びに引っ張り込まれたりして遊んでから別れ、私達はまた歩いて街へ戻った。
 その帰り道、一休みも兼ねて通りすがりの公園にぶらりと寄ったのだが、たまたま座ったベンチにいた女子大生二人と、挨拶直後から速攻談論。ロシア入りしてから薄々思っていたが、ロシアの人たちは見知らぬ他人に対してももの凄くオープンで、あっと言う間に普通におしゃべりが始まるようだ。隣に座っていた女子大生も頷いたけれど、こういう風に通りすがり同士ですぐに談義が始まるのはごく普通のことなのだそう。お天気の話すら湧かない日本人がひどく閉鎖的に思えた。
 今回の旅の初め、モスクワに着いた時から咲き誇っていたタンポポの、素朴に綺麗な光景を忘れない。


巡洋艦オーロラ


聖イサク聖堂をネヴァ川より


ペテロパブロフスク要塞とペテロパブロフスク聖堂


23時をまわってもこの明るさ。



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