「その手を抱いて-ソフトボールと医薬品-」の巻

 「・・・ねえ、なんか手みたいなの持ってなかった?!」
 「!何それ、手?!」
・・・・・・はい、"手"です。確かに持ってます・・・。

 時の過ぎるは疾く早く、今年もあっという間にソフトボール大会の季節となり10月。それなりに真面目に練習に参加したのは、チームの為上達の為と早起きの為と、急に運動することに因る怪我を回避する為であったが、当日まんまと突き指をする。
 大したことはない、と思ったが、第二試合もあるし時間もあるし、ひとつ湿布でも貰って来よう、と、待機していた救急車及び隊員の所へ向かう。大会運営本部そのものには医務班などない。救急車の脇には4人の男女が立ち話をしながらヒマを持て余していて、それも「バイトか?!」と思うような若いドイツ人達だった。
 さて、ここへ来て「指を痛めたから冷やすものが欲しい」と説明しながら、やっと、そういえば"湿布"ってなんて説明すればいいんだっけ?と頭を巡らす。早起きの寝ボケと生来のボケのせいで忘れていたが、日本では簡単に買えるのにドイツでは買いにくい医薬品というものは時々あって、ドイツには湿布というものが(ほぼ)無い。調剤薬局に行って、冷やすものというと、ジェルなどの塗る鎮静剤や、ジェル状のパックのいわゆる「アイスノン」みたいなタイプの、あてがう形のものを紹介される。更に一生懸命説明すると、貼るタイプの物がどうにか出て来るかもしれないが、在庫を置いてなくて注文する羽目になることも多い。以前一度注文した際は、商品名に思い切り「Japanisch(日本式)」と書かれていた。そうか、あれ日本の特産なのか?いや、しかしイギリスには一応あったし、単語も一応あるぞ?・・・とこんな状態だから、肩こり持ちの私は日本に帰ると毎度必ず「サロンパス」を調達してくるのだった。
 そんなことを寝ぼけ頭でぐるぐる考えながら、とにかく、「指を痛めた」「冷やしたい」「指は動かせる」「だからとにかく冷やしたい」などという会話を救急隊の若いお姉ちゃんと繰り返した後、4人が何やら相談して出た結論 ー。
「じゃあ、ちょっと行って冷やすもの取って来るわ。」
そう行って二人がどこぞへ出掛けて行った。私用の車に予備の湿布でも置いているのだろうか?
 10分程待って彼女らが戻って来た時、その手につまんでぶら下げていたのは、手・・袋?「これで冷やしたらいいわ!」ーそれは、例の半透明の、ゴムのようなシリコンのような、あの、医療用のぴったりした手袋の片手だった。トイレに行って冷たい水をそれに詰め、ぴっちりとしばって、昔懐かし氷嚢のようにしてきてくれたのである。・・・但し手型の。
 目指した物とは激しく異なるような気がするが、痛めた指を冷やす、という目的には適っている。なるほどねえ〜、と感心しつつお礼を言って、チームの所に戻ったその後、次々に浴びた言葉が冒頭の質問である。確かに、これ抱えて黙って寒そうにしてたら、ちょっと「何?!」って思うよな・・・。
 かくて、待ち時間の間はともかく、やはりソレ持って次の試合に出るわけにもいかず、固定することも手を使うこともできないので、次回大会の携行私物に「湿布」は必須となったのだった。



ぷよぷよしてなんとなく可愛い"手"。



Copyright (C) 2010 Yuki, All rights reserved.