2004.9.15 「身の用心」の巻

 NY最終日。半日弱の街歩きを最後にここからヨーロッパへ向かう。……その前に。
 時間と荷物はあるけどお金はない。今さら特に欲しい物も、わざわざ出向いて短時間で見たい物もない。博物館などでは長時間かけたい。というわけで、駅近くを、大きな本屋を探して歩くことにした。7番街のニューヨーク・ペン駅から1ブロック歩いてヘラルド・スクエア、そして6番街を南へ(結局)10丁ほど歩いてバーンズ&ノーブル(Barnes&Noble)*へ辿り着く。この間に今回のNY旅行最大の危険にさらされることになった…。
 
 ヘラルド・スクエアからまっすぐ歩き始めて間もなくだったと思う。背後を歩く男性がずっと携帯で話していることに気が付いた。友達なのか誰なのか、あまり礼儀と言うものを感じられない口調である。信号で立ち止まった時にちょっと振り返ってみると、長身の若い黒人男性で、およそ会社勤めはしていなさそうな服装である。道を渡って歩き出すと彼も同じ方向へ向かっているらしく、また私の後ろを歩いている。そして……、「……怒ってるらしい…?」
 私に、ではない。電話の相手に、である。どういう内容なのか、早口でほとんど聞き取れないのだが、とにかくエディ・マーフィかウィル・スミスを彷佛させる、実にテンポの良いリズミカルな英語で、相手をなじり・けなし・(たぶん)脅している……。「…めちゃめちゃ怒ってる…。」
 次の信号でもその次の信号でも、彼は同じように後ろをついてくる。私が早足なのか彼がゆっくり歩いているのか、そんなに長身なのになんで同じ速さで歩いてるんだよ…!しかもいっこうに気分が治まる様子が無い。相手の返事など全く聞く様子もなく、ひたすらなじり・けなし・(たぶん)脅し続けている。……怖い。電話に向かって怒鳴っているだけならいい。だが、この怒りの矛先が目の前を歩き続ける日本人に向けられたらどうしよう………!!

 結局、彼が90度方向を変え通りを渡って行ったのは、私が本屋に辿り着くまで通り2本程前だったと思う。もちろん彼は尚もなじり・けなし・(たぶん)脅し続けていた…。


*アメリカの大きな書店チェーン(たぶん)。




Copyright (C) 2005 Yuki, All rights reserved.